子供へ伝える「一塾」

世の中のわからないことを学ぶ。あと読書とか子育てとか。

車輪の下

車輪の下

著 ヘルマン・ヘッセ
約 高橋 健二

どんな内容?

 ドイツの小さな町の優秀な少年ハンスはエリートコースである神学校へ上位の成績で合格、進学する。エリートの集まり神学校でも努力を重ね、成績上位者として周囲からも認められる。
 ある時から同部屋で自由奔放に振る舞う天才児ハイルナーと意気投合し、深く友達付き合いをするようになり、その影響を受けて勉強から離れ、成績を落とし、教師からハイルナーとの距離をとるよう諭される。それでも奔放に振る舞うハイルナーに憧れるように付き合いは続いたが、ハイルナーは問題行動の末に放校の処分となった。ハイルナーは去ってもハンスは相変わらず勉強に集中できなくなり、学校の用意した医者から精神病と診断され、休養のため実家へ帰され、そのまま退学してしまう。
 地元へ帰ってしばらく休養したのち、ハンスの父から勧められた機械工への就職が決まる。就職先の機械工親方の元には、地元の学校時代の同級生が先に就職していた。初めての肉体労働に疲労困憊ながらも、仕事には充実感を得ることができた。
 就職後初めての休日に同級生の誘いで遊びに出かける。そこでは大いに羽目を外して酒と葉巻で大騒ぎするが、夕食までには帰るようにという父の言いつけ通り、泥酔状態ながらも帰宅するべく店を出るが、酔いが回って途中の森で寝てしまう。そして翌日ハンスは川で遺体となって発見される。

「車輪」とは何か

 実際読み終わった時点で「車輪の下」というタイトルが回収されたかよくわからなかった。本文中に1度「車輪」という単語が出てきた時点では漠然としていて意味をとらえきれなかった。
 調べてみると「車輪」は学校や社会の制度、人はこうあるべきだという抑圧のようなもので、ハンスという人間はうさぎを飼ったり魚釣りをしたり、読む限り勉強のため机に向かうというよりものびのび自然の中で遊ぶ子供というのが本来の姿のように書かれている。でも実際は優秀であったがために神学校への進学が期待される。期待に応えるべく勉強に励んで入試を上位で突破したが、入試が終わったあとも周りの大人からはさらに勉強を進められる。それは神学校へ入学してからも変わらず、最終的にはその抑圧、つまり「車輪」に押しつぶされる様が『車輪の下』というタイトルになっているらしい。

おすすめ度

 ページ数は250ページと短くはないが、訳語が読みやすいのと、神学校という舞台がある割には難しい表現もなく苦にならないと思う。著者のヘルマン・ヘッセという人物をハンスとハイルナーの2人に分けて心情や境遇が書かれているという解説もあって、ヘッセの人生を追ってから読むとさらに面白いと思う。

 おすすめ度
 ★★★★☆

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車輪の下