『アベノミクス』とは何だったのか。
貧富の格差拡大を招いた?
岸田文雄総理大臣による組閣も着々と進んで、いよいよ新しい内閣がスタートします。注目される経済政策について、アベノミクスによる経済政策では恩恵を受けられなかった中間層への手厚い分配、格差是正に重点を置くとしています。アベノミクスの修正を図っていくということですね。
ではアベノミクスという経済政策は一体どのようなものだったのか。成否については様々な視点がありますが、完結に内容について振り返りたいと思います。
アベノミクスという言葉の元ネタ
アベノミクスという造語は安倍元総理大臣の名前に「経済」を表す英語の「economics」をくっつけて造られています。また1980年にアメリカのレーガン元大統領が行った経済政策が『レーガノミクス』と呼ばれていることにあやかった言葉です。ただ経済政策自体はレーガン元大統領のそれとは逆の政策です。
掲げられた『三本の矢』
アベノミクスの3つの中心的な政策は「三本の矢」として掲げられました。「三本の矢」というのも歴史的逸話を元ネタとしています。政治家の作る言葉を紐解くと中々面白いです。以下がその三本の矢です。
①大胆な金融政策
②機動的な財政出動
③民間投資を換気する成長戦略
①大胆な金融政策
金融政策とは金利やお金の供給量(マネーサプライ)を調節する政策で、主導するのは「日本銀行」です。アベノミクスで行われたのは日本銀行による大胆な量的緩和です。量的とはお金の量、つまりマネーサプライを増やしました。
民間銀行がもつ国債を日銀が買い入れることで市中へお金をたくさん供給します。余りあるお金を手にした銀行はただ持っていても仕方ないので、企業などへ貸し出します。お金が市場に多く出回れば相対的に物の価値が上がりますので「インフレ期待」が起こり、実質金利は下がり、企業は積極的に借り入れして設備投資などをして景気が回復するという流れです。
②機動的な財政出動
財政出動、つまり財政政策です。財政政策は政府の収入(歳入)や支出(歳出)を操作することで出回っているお金を経済状況に合わせて動かしていくことです。金融政策が日銀主導であるのに対して、こちらは政府が主導して行います。
収入や支出を操作するというのは、例えば歳入を増やすために増税をしたり、需要換気のために公共事業を打ち出して歳出が増加するといった具合です。
安倍政権において政府主導で需要創出のため10兆円規模の財政出動を行うとしました。公共事業ですね。
そして第二の矢は第一の矢によって回復した景気を維持していくための政策という性質も持ち合わせています。
③民間投資を喚起する成長戦略
成長戦略というものは時間の経過によって変遷するものです。当然成長しているのに戦略が変わらないなんていうことはありません。アベノミクスの成長戦略は以下の四つの視点をベースに日本経済の成長を目指していきました。
・投資の促進
企業の投資を促すため、規制改革、制度改革を行っていく。
・人材活用強化
「一億総活躍社会」なんていう言葉を聞いたことがあると思います。
・新たな市場の創出
少子高齢化など新たな社会情勢を見据えた市場を開拓していく。「地方創生」など。
・世界経済とのさらなる統合
「TPP」や「EPA」など貿易に関する協定が色々ありました。
アベノミクスの柱となるのは「大胆な金融政策」
第二次阿部政権が発足する前の日本経済はリーマンショックや東日本大震災の影響もあり底を打っているような状態でした。低迷する経済を復活させる、そして復活した経済をしっかり持続してさらなる成長を目指すという流れがアベノミクスの目指すところということになります。つまり、①大胆な金融政策による経済回復が何より急務であり、柱でした。
実際その効果のほどはというと、日銀による国債の買い上げによって大量の資金が市中に出回り、市場にはインフレ期待が起こりました。日経平均は右肩上がりで上昇し、失業率も低下するなど成果は数字に表れていました。また円安も進み、輸出企業の収益改善につながり、日本経済は復活したと数字では示されました。
ただ指摘されたのは儲かっているのは大企業ばかりで、我々庶民は恩恵を受けていないどころが物価上昇や増税によって生活が苦しくなっているという問題です。事実実質賃金は下がり続け、さらに消費増税で支出が増え生活を圧迫しています。大企業や富裕層をまず先に富ませることで、そこから溢れた利益が中小企業や庶民にいきわたる「トリクルダウン」という理論のもと進められた政策でしたが、結果的におこぼれはなく、単に富裕層がさらに裕福になったという格差拡大が起きました。
本来なら大企業がしっかり儲けを出し、設備投資や国内での消費活動を行うことで、国内にお金が行き渡るという思惑でしたが、設備投資は国内ではなく外国で行われて国内需要を喚起する方向へは働かなかったという主張があります。