子供へ伝える「一塾」

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昔は当たり前ではなかった「消費税」

「消費税」は弱者に厳しいのか?

 財務省HPの【「消費税」を知ろう】という消費税について書かれたページには以下のように記述があります。

 消費税は、消費一般に対して広く公平に課される税です。そのため、原則として全ての財貨・サービスの国内における販売、提供などが課税対象であり、事業者を納税義務者として、その売上げに対して課税されます。また、税の累積を排除するために、事業者は、売上げに係る消費税額から仕入れに係る消費税額を控除し、その差額を納付することとされています【「消費税」を知ろう(財務省)】

 現在日本の消費税率は10%で食料品などの生活必需品に限り「軽減税率」が適応されて8%となっています。たとえばコンビニにおいても、イートインで食べると外食にあたり10%、テイクアウトだと8%などややこしい論争があったことは記憶に新しいです。つまり上記の定義に当てはめると、日本で買い物をすれば全員に等しく販売価格に対して10%(一部8%)の税金を上乗せして支払います。

 全員平等ならば弱者に厳しいわけではないのではないかと思われますが、所得に対する「逆進性」という見方があり、税率が一律であるというところがポイントです。例えば年収300万円の人と800万円の人が年間に税別で240万円の消費をするとします。そこに課される消費税は一律10%で過程すると24万円。支払額は等しいですが、それぞれの所得に対する割合をみると圧倒的に年収300万円の人の方が負担が大きいことがわかります。弱者に厳しい税金であるとする主張はこの論法です。

 しかしここへ所得税を絡めると少し見方が変わってきます。所得税について踏み込みませんが、収入すべてが課税所得と仮定して計算すると、年収800万円の人は300万円にくらべて約6倍もの所得税を納めている計算になります。ただ、その点を加味しても、不平等とは言わないまでも、低所得者の方が消費税によって生活への負担が大きいということは言えると思います。

「直接税」と「間接税」という分類

 税金には納税の義務が発生する対象によって以下の2つに大きく分類されます。それぞれの違いを簡単に説明すると、例えば私が納めないといけない税金を私が役所などで支払ったり、源泉徴収で天引きされるものは「直接税」、私が納めないといけない税金を商店などに一度支払って、その商店がお客様から集めた税金を支払う「間接税」といいます。つまり消費税は直接納めずに商店などを介して納税しているので、「間接税」になります。

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主な直接税と間接税
昔は消費税なんてなかった!

 私の同年代(30代後半)であればギリギリ、消費税がなかった時代が記憶にある方もおられるのではないでしょうか。私は消費税ができた当初はまだ幼稚園くらいになりますので、物心ついて買い物をし始めた時は100円のお菓子は103円の支払いでした。ハッキリと記憶にあるのは5%への増税時です。まだ、中学生くらいなので自分で買うものが少額であり、2%高くなったことに負担を感じた記憶はありません。まぁ、自分の稼ぎでもないですしね。
 ただやはり8%への増税あたりは負担が大きくなった実感はありました。10%はいわずもがなです。中でもずっと不思議だったのは自動販売機の値上げの仕方です。100円だった缶ジュースが消費税率5%になると110円に、8%になると120円にと上昇率が異常だろうと感じました。
 つまり現在50代くらいの人であれば、消費税がなかった時代から今や10%です。高額の商品であればあるほど消費税分でいろんなものが変える、なんていう気持ちになります。一時的な処置である軽減税率も近いうちに消え去ると思われます。
 
 消費税設置や増税時の政治的な部分は割愛して、簡単に流れだけを以下に記します。

 〇1989年(平成元年)4月1日・・・消費税創設 税率3%
 〇1997年(平成9年)4月1日・・・消費税率5%へ
 〇2014年(平成26年)4月1日・・・消費税率8%へ
 〇2019年(令和元年)10月1日・・・消費税率10%へ(軽減税率8%)

日本の消費税率は高いのか?

 増税の議論が進むと必ずといっていい程出てくるのが、「日本の消費税は世界水準ではまだまだ税率が低い」という主張です。また私の周りでも世界と比べても低いのだから増税は受け入れるべきじゃないか?などといって自身を納得させようとする人がいました。
 
 では日本の消費税率は世界とくらべて如何ほどか、国税庁の資料を参考にグラフにしてみました。
 

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世界の消費税率

 最も税率が高い国はデンマークスウェーデンノルウェーの25%で最も低いのが台湾とカナダの5%です。欧州は消費税率が高いというのはよく言われていますが、まさにその通りで、これをみると日本の消費税率は低いと言っても間違いではなさそうです。さぞデンマークの税収は潤っているのだろうとお思いでしょうが、見方を変えればそうでもありません。
 まず、国の税収の内訳について消費税が占める割合は、年は異なりますが、
 
 ・2017年 デンマーク 31.8%
 ・2020年 日本    34.5%

 金額にして日本円換算でそれぞれおおよそですが
 
 ・2017年 デンマーク 19兆9937憶円
 ・2020年 日本    20兆6000億円

 税収額は日本の方が多いわけです。じゃぁ別に日本の税率は低いわけではないのでは?と思われた方、さらにそれぞれの国の人口を比較します。

 ・デンマーク 600万人弱
 ・日本    1億2500万人

 デンマークは実に日本の人口の20分の1ほどしかいません。よく北欧は税率が高い分社会保障が手厚い、という話は聞くと思いますが、実は消費税収入は日本もデンマークも変わりなく、ただ同じ金額ですが人口が20分の1なので手厚い社会保障策が打てるわけです。なので北欧レベルの社会保障を求めようとすれば、消費税はやはりまだまだ税率が低いのかもしれません。

 また税率の高い欧州各国は給料も高いから苦にならないのではないかという疑問もあります。現在日本の一人当たりのGDPは40,146US$で世界23位【出典:GLOBAL NOTE】で、イギリスが40,406US$で22位、フランスが39,907US$で24位と挟まれています。さらにイタリアは28位と日本よりも税率が高い国でもGDP順位が下位の国はあります。もちろんデンマークなんかは6位と金額にして20,000US$くらいの差はありますが。

消費税について知っておくべき

 今、小学校低学年や幼稚園に通っている我が子供たちは世の中に出れば消費税というものは最初からあり、概念として存在するわけです。さらに投開票が明後日に迫った自民党総裁選挙に出馬する候補の一人が、消費税をすべて基礎年金の財源に充てるという主張をしています。それをなしとしても少子高齢化社会による社会保障の財源確保においても、子供たちが成長していく過程で増税の可能性はとても高いと思います。

 モノを購入したら消費税を払うのは当たり前だよね、だってそういうもんだもん。世界にくらべて税率が低いんだから増税はしかたないよね。というように考えることなく流れに身を任せていけば、やがては自分たちの首を絞めかねないと思います。なぜなら所得が低い程負担が大きいという事実は必ずあります。税金についてしっかり勉強して、考えて自分の意見をもって向き合うような大人にってほしいものです。