子供へ伝える「一塾」

世の中のわからないことを学ぶ。あと読書とか子育てとか。

『カラマーゾフの兄弟(漫画版)②』

どんなストーリー?

 登場人物は以下の通りです。

 〈カラマーゾフ家〉
  フョードル・カラマーゾフ(父)
  ドミートリィ・カラマーゾフ(愛称;ミーチャ 長男)
  イワン・カラマーゾフ(次男)
  アレクセイ・カラマーゾフ(愛称;アリョーシャ 三男)
 ※長男と弟二人は母親が違う。

 〈カラマーゾフ家と関係する人物〉
  カテリーナ(ミーチャの許嫁、ミーチャの軍隊時代の上官の娘)
  グルーシェンカ(フョードルとミーチャが取合う女性)
  スメルジャコフ(カラマーゾフ家の召使)
  グレゴリー(カラマーゾフ家の召使)

 〈その他〉
  ゾシマ長老(アリョーシャがいる僧院の長)


1.カラマーゾフ家の話し合い

 ロシアの小貴族であるところのカラマーゾフ家で、フョードルの遺産分配について、本来の額より少なくなるような契約書にサインさせられたとしてミーチャとフョードルで揉めます。さらにフョードルがその契約書に酔わせてサインさせるために利用した好意を寄せる女性グルーシェンカに、騙されたにも関わらずミーチャも夢中になってしまいます。お金と女性を取り合う父と兄の揉め事を仲裁すべく、アリョーシャは自身のいる僧院の長、ゾシマ長老にお願いしますが、場はミーチャがフョードルを殴ってしまうという最悪の結末になります。

2.二人の女性とカラマーゾフ家の男達の関係

 カテリーナは、過去に軍人であったミーチャの上官の娘で、その上官である父が軍隊で横領を働き、その救済に当たったミーチャに借金の肩代わりとして差し出されたという真実があり、その事実を隠しカテリーナの体裁を保つため、ミーチャによって許嫁とされていました。そして借金の肩代わりに差し出された自身のプライドを守るため、ミーチャを愛していると主張し続けますが、本心はイワンにあります。またイワンもカテリーナを愛しているとされる場面があり、アリョーシャはしっかり認識しています。

 フョードルとミーチャの争いの一旦となっているグルーシェンカはカテリーナの語られたところによると、若くして婚約者に捨てられた経緯から、男性を魅了して弄ぶことで世の中の男性への復讐としています。つまり、フョードルにもミーチャにも序盤では気持ちがありません。また、カテリーナを借金の肩代わりに差し出された売女と軽蔑していました。やがて自分を捨てた婚約者と再開しますが、ひどい仕打ちを受け、その場に乗り込んできたミーチャに婚約者を追い出してもらい、気持ちがミーチャへ傾いていきます。

3.ミーチャ(ドミートリィ)の犯行

 
 ある夜、ミーチャはグルーシェンカがフョードルの元を訪れるという情報を得ます。フョードルはグルーシェンカを迎え入れるため、支度金なのか3,000ルーブルを用意して厳重に施錠された自宅で待っています。日本円の現在の貨幣価値に換算すると1ルーブル=2,200~2,700円くらいとする説が有力らしく、仮に2,700円とすれば810万円という大金です。また、以前ミーチャはグルーシェンカの気を引くために開催した「どんちゃん騒ぎ」に3,000ルーブルを投じており、そのお金はカテリーナから預かっていたお金でした。その3,000ルーブルを父親を殺してでも手に入れ返金するとカテリーナへ手紙を書きます。
 グルーシェンカがフョードルの元へ行くことを阻止し、さらに大金を手に入れるという動機が出来上がったミーチャは、凶器を手にしてフョードル宅へ出向き、事前にスメルジャコフから屋敷を解錠させるノックの方法を聞き出しており、フョードルの部屋の窓をノックして鍵を開けさせます。その後、逃走を試みますが、物音に気付いて起きてきた召使のグレゴリーに捕まりかけますが、持っていた凶器で殴り倒し逃げ切ります。そしてその足でグルーシェンカの元へ向かいます。
 元婚約者の振る舞いに絶望したグルーシェンカを元気づけるため、またすぐに犯罪者として自身が逮捕されるであろうと悟っているため、グルーシェンカを連れ出しどんちゃん騒ぎをします。そこへ警察が踏み込んできて、ミーチャを問いただします。このときミーチャはグレゴリー殺害を認めましたが、グレゴリーは生きており、自身が殺人を犯していないことに安堵します。しかし、警察にかけられた容疑はフョードルの殺害容疑でした。ただミーチャがフョードルを殺害する描写はなく、ミーチャ自身も完全に否定するも逮捕されます。

4.ゾシマ長老の死去と神への信仰心

 アリョーシャの所属する僧院の長であるゾシマ長老は僧院内でも町民の間でも、預言者、聖人と崇められる人物でした。その長老に死期が迫ったころ、人々の間に「ゾシマ長老ほどの人物であれば、死後に奇跡が起こる。復活が見られるのではないか。」と期待が生まれました。床に伏した長老はアリョーシャへ、聖職者として今後やるべきことを説いたのちに息を引き取ります。その後、人々は奇跡が起こるのを待ちますが、長老の遺体は復活することはなく、部屋の喚起不足も相まって早々に腐臭を放ちます。そして他の僧院の神父に罵られ、唾を吐きかけられたのをみたアリョーシャは「長老のような素晴らしい人物が死後にこんな恥辱をうけるとは、神様は何を考えておられるのか。」と、自身の信仰心に迷いが生じますが、ゾシマ長老の最後の言葉を思い出し、自身の行うべきことを考え、僧院から出ていくことを決めました。

5.イワンの迷いとスメルジャコフ(使用人)による告白

 イワンに問い詰められてスメルジャコフはフョードル殺害と3,000ルーブルを盗んだことを認める。またスメルジャコフの生い立ちについて語られ、フョードルは実は父親であり、自分もカラマーゾフの兄弟であることをイワンに伝える。イワンはスメルジャコフが盗んだ金を証拠として押収し、裁判で犯行を自供するよう伝えてその場を去る。しかしスメルジャコフはその後すぐ自殺してしまう。

6.フョードル(父)殺しの裁判

 フョードル・カラマーゾフ殺害事件の裁判がミーチャを被告人として開始されました。多くの証人が召喚され、各々がもつ証拠を提示し有罪無罪の議論が成されます。そんな中で無罪を主張するミーチャにとって最も不利な証拠となる、父を殺してでもお金は返すという内容の手紙を持ったカテリーナが証言台に立ちます。裏切ったミーチャに対してカテリーナはその手紙を出すことなく、さらにミーチャの無罪を主張する証言をします。
 最後に証言台に立ったのはイワンで、スメルジャコフが犯行を自白したこと、その時に奪われたお金を証拠として提示し、ミーチャの無罪を主張しました。しかし、その後錯乱し、誰もが内に殺意を持った殺人者であり、領主である父親殺しは民衆の願いでもあったというように喚き散らします。ここは正直、どのように解釈していいかわかりませんでしたが、イワン自身が殺害を望んでおり、その首謀者であるような内容があったことで、イワンの逮捕を恐れたカテリーナはミーチャからの手紙をミーチャ有罪の証拠として提出してしまう。これによってミーチャには禁錮20年とシベリア労役の刑罰が下ります。

 その後アリョーシャによるミーチャへの脱走の提案や街の少年たちとのやり取りがあり、アリョーシャは人々の間に立ち、調和を図ることを自身の役割として生きていこうと決意して物語は終わります。

おすすめ度

 ★★★★☆

 ストーリーに関しては私の拙い理解と文章力ですから、すべて明確に書けたとは思いませんが、ざっくり筋はなぞっていると思います。ロシアの時代背景や当時のキリスト教がさらされている風潮などを事前に頭に入れて読めば、物語以上のものがみえると思います。
 漫画が入口でも『カラマーゾフの兄弟』の物語を知っているか知らないかでは教養としても大きく差が出ると思います。